食物アレルギーの発症予防

2019年12月6日金曜日

アレルギー


今日のメッセージ:皮膚を綺麗にして食物アレルギーを防ぐ
         離乳食を遅らせる必要はない

 近年、小児科診療の中で大きく治療が変わったのが食物アレルギーへの対応です。
昔は血液検査で陽性反応が出れば1歳まで(場合によっては3歳まで)その食材を除去していた時期がありましたが、今では違います。古い知識だけだとむしろ悪化させることがあります。最近の学会での報告などを踏まえて最近の分かってきた事を紹介します。
 ただしこれらの内容を基に自己流で行わず、既に卵アレルギーが疑わしい児や重症のアトピー性皮膚炎の児は専門医に相談してください。

1.アレルギーのメカニズム: 
 体の外から入って来て体に悪影響を及ぼした物を危険物と学習し、後に再び侵入してきた時に危険を認識し排除するのが免疫機能です。それが本来有用な物(食べ物など)や無害な物に対しても起こるのが(食物)アレルギーです。どれが危険物質かを間違えて学習したのです。

2.昔は妊婦の食事制限をしていた: 
 母乳しか飲んでいない赤ちゃんが初めて離乳食を食べたものに対して強いアレルギー反応を起こす事があります。その場合「母親の胎内でまたは母乳を通じてアレルギーになった」と疑われていました。世界中で妊婦や授乳中のお母さんの食事制限を行っていた時期がありましたが、大規模な調査により食物アレルギーやアトピー性皮膚炎への予防効果はない事がわかりりました。

3.食べ始め時期が遅い食材がアレルギーを起こしていた:
 アメリカでは2000年からは「ハイリスク児に対して原因となりそうな食材の開始を遅らせるように」ガイドラインに記載されましたが、むしろ食物アレルギーの患者は増えてしまいました。2010年にかけて海外の調査で、ピーナッツ、鶏卵、牛乳(粉ミルク)で開始時期が遅い方がアレルギーになりやすいという結果が相次いで報告されました。

4.早く食べれば予防できるか:
 海外でいくつもの調査がされましたが設定した量などの問題から上手くいかずにいましたが、国立成育医療センターが行った臨床研究で、アトピー性皮膚炎患者を対象にしっかり治療しつつ生後6か月から開始した児の方が、卵の食べ始めを遅らせた児よりも卵アレルギーの子が少なかったという結果が出ました。一方で離乳食があまりにも早すぎる場合もアレルギーになりやすかったという報告も海外からありました。

5.皮膚から入る食物がアレルギーを引き起こす:
 「生後3-4か月までに湿疹が発症した児の方が、成長してからの食物アレルギーになりやすい」との調査結果が日本や海外から2016年に報告されました。食べていなくても食物は生活環境の至る所にあります。乳児の寝具を調べるとピーナッツと鶏卵のアレルギー成分がある事が証明され、特に調理後に増えている事が分かりました。通常、食物のアレルギー成分は大きすぎて正常な皮膚を通れません。湿疹などバリア機能が破壊された皮膚から侵入してきます。実際に、寝具のアレルギー成分のの量とアトピー性皮膚炎の重症度とが、食物アレルギーのなりやすさに関連していました。湿疹で赤くなっている皮膚は、侵入してきた少量の細菌と戦っている免疫細胞がいます。そこに紛れ込んだ食物成分は細菌と一緒に「危険物」として間違えて認識されやすくなっています。

7.皮膚の状態が食物アレルギー症状を悪化させる:
 皮膚を掻くと皮膚の細胞から出た物質が、腸管の表面のアレルギー担当免疫細胞を活性化し、アナフィラキシーを起こしやすくなる事が2019年報告されました。既に発症した食物アレルギーの患者さんも、合併する皮膚の状態を良くすることで、食物アレルギーの症状を抑えられると考えられています。

8.プロバイオティクスはアレルギー予防に有効か:
 色々なヨーグルトメーカーから、アレルギー予防やインフルエンザ予防に良いと宣伝している物があります。菌によっては腸管の免疫細胞に直接働きかけたり、食物繊維を分解して出来た成分が免疫細胞に働きかけて、アレルギーを予防する可能性が様々な学会で発表されています。人種(ヒトの遺伝子)の違いや、食生活の違い、季節、年齢など様々な要素があり、同じ菌でも正反対の結果が出るなどまだどれが良いか結論には至っていません。現時点では「良さそうだ」以上ではありません。